第309章

白井雪葉にとっても、その一件は大きな衝撃だった。

水原ジュエリーといえば、国際的にもその名を轟かせる名門だ。

だが、水原雪乃はあえて水原ジュエリーを黒川綾に委ねようとしている。それはつまり、黒川綾の立場を公に認めたも同然だった。

もし他の誰かであれば、この申し出に二つ返事で飛びつき、微塵も躊躇わなかったに違いない。

しかし、白井雪葉は黒川綾という人間の性格を熟知している。

水原拓真はかつて、あれほど深く綾を傷つけたのだ。償うつもりなら、こんな形ではなく、誠意を見せるべきだろう。

黒川綾は言葉を切ると、顔を上げて白井雪葉を見つめた。その瞳には、どうしようもないやるせなさが滲んでいる...

ログインして続きを読む