第312章

吉野文詠がこの会社に入り、プロジェクトに参加したのは、最初から単なるビジネスパートナーとしての協力などではなかった。

だが、水原拓真はそんな彼女に猶予を与えた。先に電話をかけてくるよう促したのだ。

文詠は席を外し、人目のつかない場所へ移動すると、周囲に誰もいないことを確認してから、ようやく黒幕であるオーナーに電話をかけた。

「オーナー、まずいことになりました。水原拓真がこちらの動きを怪しんでいるようです。今回、私をプロジェクトに直接関わらせろと強く要求してきました」

「もし断れば提携を打ち切ると……。この案件がなくなれば、今後彼に接触するのはさらに難しくなります」

その言葉を聞くや...

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