第346章

「今まで奴に甘すぎたようだ。自ら罠に飛び込んできたからには、容赦はしない」

黒川綾は小さくため息をつき、その横顔にいくばくかの憂いをにじませた。

「あなたの目の前で薬を盛れるなんて、相手は少しもあなたを恐れていない証拠よ」

「本気で対抗するにしても、万全の準備をしておかないと。何か手抜かりがあったら大変だわ」

なぜだか、黒川綾の胸の奥には絶えずざわざわとした不安が渦巻いていた。

水原拓真がこれほど大きな隙を見せたことは、今まで一度もなかったからだ。

黒川綾と一緒にいるようになってからも、こんな事態に陥ったことはない。

水原拓真はうなずき、黒川綾を見つめる瞳にはありったけの優しさ...

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