第381章

低く掠れたその声には、底知れぬ誘惑の響きが孕んでいた。

黒川綾は顔を上げ、彼の口元に浮かんだ邪悪で魅力的な笑みと視線を交わすと、静かに首を横に振った。

「嫌です」

その態度は固く、一切の妥協を許さない響きがあった。

水原拓真の笑みが凍りつく。無意識に手を伸ばし、綾の頬に触れようとしたが、彼女はぷいと顔を背けてそれを避けた。拒絶の意志は明白だった。

「だから、あの日のことをまだ気にしているんだな?」

「もちろん違います」

綾は間髪を入れずに答えた。

「過去のことは過去です。もうこだわりたくありません。ただ先のことを考えたいだけ。あなたのことには関わりませんし、口出しもするつもり...

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