第416章

静寂に包まれた部屋。

林田安織は自嘲気味に口角を上げた。

「ええ、分かっているわ。私からこうして持ちかけるのが不快だということは。でも、仕方ないの。母は数年前に亡くなり、祖父が睨みを効かせていたからこそ、父もこれまで身勝手な振る舞いを控えていた。でも、状況が変わったのよ」

林田家のお家騒動は、名門のコミュニティではもはや公然の秘密だった。

水原雪乃は日々ジュエリー会社の経営に注力しており、他人のゴシップには無頓着だったため、その事実を知らなかった。

一方、水原拓真は林田家の企業と提携を結ぶ前に、彼らの内情をすでに隅々まで調べ上げていた。

林田家の当主である安織の父親は、やり手のビ...

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