第419章

照明の下。

水原拓真の暗く沈んだ瞳から、背筋が凍るほどの冷気が放たれている。

老執事は仕方なく、すぐさま退院手続きを済ませ、彼を連れ帰るほかなかった。

帰路の車中、執事は何度か屋敷へメッセージを送ろうと試みたものの、そのたびに拓真の鋭い視線に射抜かれ、手を止めた。

やがて。

車が屋敷の玄関前に滑り込む。

拓真は自ら車椅子を操作し、黒川綾の部屋の前までやって来た。

扉を開けると、中から規則正しい寝息が漏れ聞こえてくる。

ゆっくりとベッドサイドへ近づく。ベッドで熟睡している二人の呼吸は穏やかで、その身体からはふわりとほのかな香りが漂っていた。以前なら、この寝息を聞くだけでこの上な...

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