第476章

いいムードを邪魔され、二人の興致はすっかり冷めていた。

現在、室内は水を打ったように静まり返り、針の落ちる音さえ聞こえそうなほどの死の静寂に包まれている。

黒川綾はスマートフォンを取り出し、慌てる様子もなく仕事のメールを返信している。

一方、水原拓真はタバコを一本手に取り、大きなフランス窓の前に立って外を眺めていた。

眼下には車が行き交い、賑わいを見せているが、彼のその後ろ姿は酷く孤独で、まるでこの世界に彼一人しか残されていないかのようだった。

黒川綾は横目でちらりと彼を見て、すぐに視線を戻した。

やがて、ドアの外から慌ただしい足音が響いてきた。

それに続いて、女の声が聞こえて...

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