第520章

オフィスは異様な静寂に包まれた。

吉野文詠は恐る恐る口を開いた。

「本当に、彼と手を組むつもりですか」

黒川綾と白井弦羽の間に交わされた契約を、吉野文詠は知っている。

だが、なぜかその日が近づくにつれ、えも言われぬ不安が募っていくのだ。

黒川綾は口角をわずかに上げて微笑んだ。

「どうしたの、ご主人様を裏切るつもり? それに、私たち二人の協力関係はとうに合意済みよ。私は自由を求め、彼は復讐を望んでいる。互いの利害が完全に一致しただけ」

前世の恩讐など、もう関わりたくない。

夢に現れた父が望んでいたのは、私が憎悪に溺れることではなく、心から幸せに笑って生きることだったのだから。

...

ログインして続きを読む