第539章

ガチャリ。

オフィスのドアが開いた。

黒川綾が無意識に視線を向けると、スーツ姿の水原拓真が歩み寄ってくるのが見えた。その手にはテイクアウトの容器がいくつか握られている。

「忙しいとすぐ食事を忘れるだろ。ほら、こっちへおいで。君の好きなものばかり買ってきたよ」

そう言いながら、彼は手際よく容器を開け、デスクの上に並べていく。

確かに、どれも彼女が普段から好んで口にするものばかりだった。

黒川綾は呆気にとられた顔をした。

「最近、仕事が立て込んでいるんじゃなかったの?」

わざわざお昼を届けるような時間がどこにあるというのだろう。

水原拓真はふっと微笑むと、歩み寄って黒川綾の身体...

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