第562章

黒川綾は顔を上げた。

「とにかく、あなたには幸せに生きてほしい。今のあなたが復讐のためだけに生きていると知ったら、ご両親だって胸を痛めるはずよ」

これ以上言っても無駄だ。彼女は硯を持ってきびすを返し、その場を後にした。

白井弦羽はソファに気だるげに寝そべりながら、露骨な軽蔑の表情を浮かべた。

「でたらめを。親父たちは絶対に復讐を望んでるさ。死に際にもそう言ってたんだからな。仇を討てって」

あの日、あの瞬間から。彼の人生にはたった一つのことしか残されていない。すなわち、復讐である。

なぜ復讐しないという選択肢があるだろうか。

彼は赤ワインのボトルを手に取り、ラッパ飲みでごくごくと...

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