第563章

むせ返るような血の匂いが、空気に重く立ち込めていた。

水原拓真は痛みなど感じていないかのように、ただ麻痺した様子で、何度も何度も拳を壁に叩きつけていた。

手の甲は血まみれになり、見るも無惨な状態だ。

その時、外から駆け込んできた執事が、水原拓真の変わり果てた手を見て、悲鳴のような声を上げた。

「どうされたのですか!? こんな……早く、早く手当てを!」

執事はすっかり取り乱し、水原拓真の腕を引いて外へ連れ出そうとする。

水原拓真は力任せにその手を振り払った。

「もういい、今は一人にしてくれ」

バンッ、と激しい音を立ててドアが閉まる。

ドアの外で執事はひどく焦っていたが、どうす...

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