第571章

オフィスは静まり返り、針が落ちる音さえ聞こえそうなほどだった。

黒川綾の冷徹なまでの落ち着きを見て、吉野文詠はそれが深い悲しみの裏返しであることを悟った。

「とにかく、私はただ伝えたかっただけ。私たちのところなら、いつでも歓迎するわ」

吉野文詠がティッシュを差し出して初めて、黒川綾は自分が涙を流していることに気づいた。彼女は顔を上げ、涙を押し殺した。

「分かったわ。少し、一人になりたいの」

「もちろんよ。何度でも言うけれど、私たちと組む気になったら、いつでも歓迎するから」

吉野文詠はそう言い残し、背を向けて立ち去った。

オフィスに一人残された黒川綾は、もう耐えきれずにソファに崩...

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