第574章

感情の機微、あるいは対人関係のコントロールにおいて、林田月香はどこか恋愛至上主義的なきらいがあった。

男を前にすると、どうにも理性を失いがちになるのだ。

ビジネスにおいては卓越した先見の明を持ち、手掛けた投資で損失を出したことはほぼ皆無と言っていい。

大学を卒業した年に小さな会社を立ち上げ、莫大な利益を上げたこともあった。ある男に出会って恋愛に溺れさえしなければ、彼女は自らの手で巨大な財を成していたかもしれない。

その野心を露わにしたとき、彼女の心はすでに決まっていた。

林田承一は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てた。

「聞いたかよ。これが母さんの大事な娘だ。あれこれと骨を折って...

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