第575章

黒川綾がどれほど辛辣な言葉を浴びせようとも、執事の態度は少しも崩れなかった。

彼はドアの前に立ちはだかり、何があっても黒川綾を外へ出そうとはしなかった。

黒川綾は自嘲気味に笑った。

「お前たち、口では私のことを奥様と呼ぶくせに……」

自由など少しもない。

冷ややかな視線を執事へ向け、きびすを返して二階へと上がっていった。

執事は額の汗を拭い、少し離れた場所で常に待機しているボディガードへ、音もなく視線を送った。

彼は心底恐れていた。黒川綾が強行突破して出て行くのではないかと。

過去にそういった事態が起きなかったわけではないからだ。

幸い、黒川綾は何もせずに部屋へ戻ってくれた...

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