第588章

次の瞬間、轟くような雷鳴がまた山を揺らした。

稲妻が長い空を裂き、周囲を一瞬だけ昼のように照らし出す。

目を凝らしたときには、あちらにいた黒川綾と白井弦羽の姿は、もうどこにもなかった。

地面に投げ捨てられた一本の傘だけが残っている。

助手は口を開けたまま呆然と立ち尽くした。はっと我に返ったときには、水原拓真がすでに車から降りていて、車内の傘すら手に取らず、そのまま山へ駆け出していた。

迷うわけにはいかない。社長に何かあったら、自分の人生も終わりだ。助手は傘といくつかの物資を掴むと、雨の幕へ飛び込み、山道へと踏み入れた。

ごろごろ、ごろごろ。

空は雷と稲妻で荒れ狂う。

黒川綾は...

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