第54章

葉山風子は自分の選んだ服を横取りしようとする人がいるなんて信じられなかった。振り返ると、そこにはピンク色のスーツを着た男性が立っていた。黒縁の眼鏡をかけ、デッドプール役の俳優に少し似た顔立ちをしている。

「すみません、この服は私が先に見つけたものですし、ウェイターが最初に私に持ってきてくれたものなんですけど」葉山風子はその男性を見つめながら注意した。

男性はまったく動じず、むしろポケットから名刺を取り出して葉山風子の前に差し出した。

「お嬢さん、私が誰か分かっていないようですね。これが私の名刺です。エンジェル投資会社のコンサルタントをしています。リチャードとお呼びください」リチャードは...

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