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モーガン

私ははっと息を呑んで目を開け、心配そうに私を見下ろしているアーニャを見上げた。

「レディ・モーガン、大丈夫ですか?」

記憶が溶け始め、その音はパイラの記憶の奥底へと退いていった。だが、驚愕に歪んだシオラの顔が脳裏から離れない。まだ血の匂いが漂っている気がした。戦争が激化する中、引き裂かれ、あたりに散乱した彼女の物言わぬ亡骸……。

私は唾を飲み込むと、無理やり笑顔を作り、頷いてみせた。心臓は早鐘を打ち、涙が目に滲んでいた。

「ごめんなさい、ただ……幻視(ビジョン)のようなものが見えて」

アーニャは目を丸くした。「レディ・モーガンは予言者なのですか?」

私は首を横に振った。「そういうわ...

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