137

モーガン

彼女は予想以上に速かった。衛兵たちが押し寄せる中、冷涼な夜気は甲冑がぶつかり合う鋭い金属音と、訳も分からず混乱する野次馬たちのざわめきで満たされていた。

包囲網が狭まるのを感じたのか、彼女は急旋回して市場へと続く狭い路地の一つに飛び込んだ。焼きたてのパンの香ばしさと、都の暗部特有の鼻を刺すような腐臭が入り混じる。俺は後を追いながら、彼女の行き先を予測しようと視線を前方へ走らせた。

「門を封鎖しろ!」隊長が張り詰めた声で命じる。「西地区へ増援を送れ!」

都の通りは馬で抜けるにはあまりに狭かったが、足のいい馬を選んでおいて正解だった。両側に迫る商店や民家の石壁が長い影を落とし、衛...

ログインして続きを読む