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レン視点

その後、ほどなくして店を出た。彼が私に向けたあの眼差しや、モーガンとの政略結婚が決まっているにもかかわらず結婚を口にしたことへの思いで、私はまだ夢見心地でふわふわとしていた。

だが、彼が彼女と婚姻関係を続けるつもりはないように思えた。エレベーターに着いたところで、リュウが不意に足を止めた。彼は鋭い動きで私の方を向く。

「どうしたの?」

彼は私を見つめ、視線を下へと這わせると、奥歯をぐっと噛み締めた。

「レン」低く、切迫した声だった。「血が出ているぞ」

私は彼の視線を追った。シャツの脇、肋骨のすぐ下のあたりに、黒いしみがじわりと広がっている。

「あ……」

めまいの波が押...

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