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レン

ドアの上のベルがチリンと鳴り、麺料理店に足を踏み入れると、醤油と出汁の香り、そして懐かしさが一気に押し寄せてきた。

「レン!」ハルカは持っていたお玉を取り落とさんばかりにして、私に駆け寄り抱きついてきた。「戻ってきたのね。神様、ありがとう。本当に大丈夫なの?」

「大丈夫、約束する」私も同じくらい強く彼女を抱き締め返した。「無理はしないから」

彼女は全てを察したような顔をした。「わかるわよ。退屈で死にそうだったんでしょ? 私も入院なんて大嫌い」

「想像を絶するわよ」

私たちは笑い合い、一瞬だけ、全てが元通りになったように感じた。私のエプロンは店の裏に掛かったままだった。接客のリ...

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