第140章

「そうか?」桐谷憂の声には、危険な響きが孕んでいた。

空見灯はソファの上で思わず身震いしたが、それでも力強く頷いた。

「はい。そういう契約である以上、私たちは距離を置くべきだと思います」

永瀬睦が現れた瞬間、空見灯は違和感を覚えた。いや、おかしいのは自分の方だ。

彼女はずっと自分に言い聞かせてきたはずだ。自分と桐谷憂は、単なる協力関係に過ぎないと。

だが、桐谷憂がいとも簡単に永瀬睦を撮影所のプロジェクトに参加させ、あまつさえ彼女の離職について一言も尋ねなかったことを思うと、空見灯は急に胸が詰まるような息苦しさを覚えた。

もし今日、徳川命に突発的な事故が起きていなければ、彼女は唐沢...

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