第154章

唐沢琉璃がオフィスに足を踏み入れた瞬間、空見灯はようやく源静流の言葉――「彼女の様子がおかしい」の意味を理解した。

唐沢琉璃は質素な身なりで、化粧すらしておらず、その顔色はひどく憔悴していた。手に提げたブランドバッグと、まるで部屋着のような服装との不釣り合いさが、彼女の異常さを際立たせている。

もし街中ですれ違っていたら、空見灯は唐沢琉璃だと気づかなかったかもしれない。

唐沢琉璃は席に着くなり、単刀直入に切り出した。

「空見社長、申し訳ありません。和解を申し込みに参りました」

声は平坦で、表情も凍りついたように動かない。だが空見灯には分かっていた。あらゆる手段を尽くした挙句、最後に...

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