第160章

帰路につく車内、桐谷憂は何度か口を開きかけたが、空見灯はずっと窓の外に視線を投げたままだった。

永瀬睦の姿を目にした瞬間、灯の胸に燻っていた最後の怒りも消え失せていた。

ただ、ハンドルを握る桐谷憂の横顔を視界の端に捉えるたび、言葉にしがたい感情が渦巻く。

今日の桐谷憂の行動はすべて、彼女のためだった。彼女の鬱憤を晴らすためだったのだ。

いつからだろうか。二人の間の空気が、以前とは違うものに変質してしまったのは。

それが吉と出るか凶と出るか、灯には判別がつかなかった。

片明メディアのビルに到着してようやく、空見灯は我に返った。

「どうして私がここに住んでるって分かったの?」

「...

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