第161章

周囲からの視線を感じ、空見灯は慌てて彼の身体から身を離した。

「私は大丈夫。それより手が……血が出てるわ。手当てしないと」

彼女は周囲に余計な説明をするのも億劫で、桐谷憂の手を引くと、その場から足早に立ち去った。

だが空見灯は分かっていた。自分たちがまもなく噂の的になることは避けられない。早急に手を打ち、事態を沈静化させなければならないと。

幸いにも、彼女の休憩室までは一階分上がるだけだった。

空見灯は救急箱を取り出し、桐谷憂の傷を丁寧に手当てし始めた。

「素手でエレベーターをこじ開けるなんて、桐谷社長、本当に無茶するわね。消防に連絡すればよかったのに」

彼の手の傷を見て胸が痛...

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