第265章

空見灯が家に帰り着いた頃には、すでに観月蒼が桐谷大正の診察を終えていた。

病床で固く目を閉じる老人を見て、空見灯の胸は痛んだ。

信頼していた者に裏切られる感覚――それは彼女自身、痛いほど身に覚えがある。受け入れ難い現実であることもよく知っていた。

桐谷大正は数々の修羅場をくぐり抜けてきた人物だ。表面上は平然としていても、その内心まで穏やかであるはずがない。

観月蒼は手を振って言った。

「全員下がれ。休ませてやれ」

空見灯と桐谷憂は、その言葉に従って部屋を退出した。

「おい小僧、祖父さんの容態は安定しているぞ。灯の鍼の腕前と処方のおかげだ。お宅は本当にいい拾い物をしたな。ワシらが...

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