第287章

競売の幕が上がり、司会者の睦が流暢な口調でオープニングトークを紡いでいた。

桐谷憂が声を潜めて尋ねる。

「あのサファイアが欲しいのか?」

彼はテーブルの下でそっと空見灯の手を包み込み、確かめるように力を込めた。

空見灯もその手を握り返す。

「タダでもらえるものを、断る理由なんてある? さっきの賭けは私の勝ち。出品される高麗人参も私のものになったし、手続きだって済ませてあるわ」

彼女は視線をステージに向けたまま、口元に微かな笑みを浮かべた。

「今日の収穫は上々ね。でも、あの人にもっと散財してもらえれば、さらに気分が良くなるんだけど」

囁くような声だったが、桐谷憂の耳にはしっかり...

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