第九十八章

空見灯はうつむいたまま、素早くスマホを操作して配信を切った。

アカウントのフォロワー数が爆発的に増え続けているのを見て、彼女は呆れたような溜息をつく。こんな形で世間の注目を浴びることになるなんて、夢にも思わなかった。

傍らで彼女を見下ろしていた桐谷憂が、低い声で言った。

「俺は、人に見せられない存在か?」

空見灯は不思議そうに彼を一瞥した。

「桐谷社長、お忘れですか? 『契約の三十箇条』を」

その契約の中で最も重要な条項の一つが、二人の婚姻関係を公にしないことだった。違約金は莫大な額になる。

桐谷憂は不機嫌そうに、舌で左の頬を内側から押した。

その時、空見灯のスマホに鏡京介か...

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