第5章

実のところ、しばらく慎太郎と渡辺星奈のことは気にしていなかった。離婚協議書を弁護士に作成してもらうので忙しかったからだ。

今日、カフェで彼らに会ったのは、まったくの偶然だった。

彼らは私に気づかなかった。私がこれまでカフェに来ることなど、ほとんどなかったからだ。

二人は私のすぐ後ろの席を選んだ。距離が近く、彼らの会話ははっきりと聞こえてきた。

「プロジェクトの進捗はどう?」

慎太郎が優しく尋ねる。

「すごく順調。クライアントも私のデザイン案に満足してくれたわ」

渡辺星奈は興奮した様子で言った。

「慎太郎お兄ちゃんが教えてくれたおかげ。すっごく上達したの」

渡辺...

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