第 23 章 深夜生化学棟のタッセルの影

宮本雪穂がオーロラベンチャーのインキュベーターオフィスを出た時、既に深夜 11 時 47 分だった。

廊下の人感センサー付き照明が次々と点灯し、彼女の疲れきった影を細長く引き伸ばす。

手には七回も推敲を重ねた独立プロジェクト最終審査企画書を握り、USB メモリの縁は掌で温められて熱を帯びていた。

この書類は明日午前 10 時までに審査委員会に提出しなければならない。だが今、その紙束は冷たい重みだけを残し、今夜の全ての努力が水泡に帰す可能性を突きつけてくる。

駐車場は寂しいほどに空っぽで、高い街灯が青白い光の輪を落としているだけだ。

雪穂はコートをきつく引き寄せ、思わず歩調を速める。

残業の疲...

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