第49章 鏡花の亀裂——リハビリセンターの「家族三人」

桐谷晨が慌ただしく病室に戻った頃、宮本雪穂の姿は既に病室の隅から完全に消え失せていた。

霍氏私立リハビリセンターの広々とした玄関ロビーに佇む雪穂は、真昼の柔らかな陽射しを浴びていた。大きなガラス壁を透き通った光が床に降り注ぎ、まだらで揺らぐ光影を描き出し、静かな昼時の空気を淡く彩っている。

彼女のすぐ隣には桐谷淵が立っている。端正な濃いグレーのスーツは一切の乱れがなく、洗練された大人の雰囲気を纏い、襟元からはモミの木の清冽な香りと温厚な木の香りが混ざり合った淡い薫りが、そっと周囲に漂っている。

「約束通り、適度な距離を保て。」

桐谷淵の低い声音は穏やかながら、誰も拒絶できない絶対的な命令の重...

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