第50章 砂糖の味とプロジェクトの沈黙

月曜の早朝、宮本雪穂が回転ドアを押し開ける指先は、ひんやりと冷たかった。

昨夜はほとんど一睡もできなかった。週末、霍氏私立リハビリセンターで妹の雪乃を見舞って以来、屈辱を堪えながら桐谷淵と表面的な均衡を保った疲労が、絶え間なく潮のように押し寄せてくる。

車の傍で桐谷淵が告げた「階下までの送りのみ」という自制的な約束が頭をよぎる。だが手首のスマートウォッチを見るたび、位置共有の緑色ライトが見えぬ鎖となって胸を塞ぎ、息苦しさを募らせる。

本来は直接デスクに向かうつもりだったが、廊下の曲がり角から抑えきれないすすり泣き声が漏れてくる。

足を止め、チームのデータ整理をいつも手伝ってくれる後輩の小微だ...

ログインして続きを読む