第五十八章 婚約披露宴の残響

風の吹きさらす場所に一人佇む雪穂の姿を捉えると、彼はわずかに眉を寄せ、足取りを一瞬止めた。

「なぜここに一人で立っている。」

低音の声には、無視することのできない重圧が宿っていた。

雪穂は思わず半歩後退し、背筋がぴんと張り詰める。

その深い瞳を避け、できる限り声を穏やかに保つ。

「晨を待っています。」

桐谷淵の眉間のしわはさらに深まる。

手首の時計をちらりと眺め、淡々と、しかし率直に告げた。

「位置情報によれば、彼はまだ実験室で残業している。少なくともあと一時間はかかる。」

雪穂の指先が体の脇できつく収縮する。

彼女はもちろん知っていた。桐谷母は午前中、補佐を通じて「早く来すぎないように」と...

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