第 62 章 また難を逃れた

宮本雪穂が学術交流センター最上階の廊下を通る時、足音はほとんど聞こえないほど軽かった。

廊下の空気はエアコン特有の冷たさを帯び、壁に掛けられた抽象画は薄暗い照明の下、不気味な輪郭を投げかけている。

側扉を押し開けると、夜風が湖の湿気をまとって一気に押し寄せた。

雪穂は立ち止まらず、人工湖沿いの石畳の道を速足で進み、背後の晩餐会のざわめきが距離に飲み込まれて完全に聞こえなくなるまで歩いた。

その時、影の中からハイヒールが地面を叩く澄んだ音が響いた。

「おめでとう、また難を逃れたわね」

江安琪の、いつもの嘲りを含んだ声が暗闇からゆっくりと現れる。

彼女は端正な仕立ての濃い色のドレスを身にまとい、...

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