第 85 章 さっき餌をあげていました

夜が深まり、南区学術交流センターのテラスにはセミナー終了後の余熱がまだ残っていた。

江安琪は「学術アシスタント」という肩書でここに姿を現していた。表向きは江教授の資料整理を手伝っているが、雪穂へと向けられるたびの視線には、隠しきれない険悪な思いが宿っていた。

彼女はお茶休憩用の丸テーブルのそばに立ち、何げなく温かい紅茶を一杯、雪穂の目の前へ押し出した。

雪穂の鼓動が少し速くなったが、逃げることはしなかった。

彼女は手を伸ばしてコップを持ち上げ、江安琪の冷ややかな視線を受け止めながら、ゆっくりと一口飲み込んだ。

苦みが喉を伝って滑り落ちていく。これは無謀な冒険ではなく、真相を確かめるための行動...

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