第5章

会社の年次総会の会場入り口に、私は立っていた。

例年であれば、株主として誠の腕に手を添え、共に列席していた。

けれど今日、私は一人でここに来た。

会場は格式高い宴会場が選ばれており、私は祖母から受け継いだという深藍色の牡丹柄の和服をまとい、髪を高く結い上げている。

引き戸を開けた瞬間、会場内の談笑がわずかに途絶えた。視線が、まるで実体を持つかのように私へと突き刺さる。

人々の輪の中心に、誠が立っているのが見えた。多くの役員に囲まれ、その表情は自信に満ち溢れている。そして彼の隣には、白石瑞希がその腕に絡みついていた。彼女は艶やかな赤い和服を身にまとい、過剰なまでに精巧な化...

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