第7章
車内で私は目を覚まし、意識が次第にはっきりとしてくる。
身体にはコートが掛けられており、ほのかな白檀の香りが鼻先をくすぐった。
これは池端光のコートだ。昨夜、私が眠ってしまった後で掛けてくれたのだろう。
目をこすりながら見ると、池端光はシンプルな白いTシャツ一枚で車の外に立っていた。彼はこちらが目覚めたことに気づくと、すぐさま温かい笑みを浮かべ、ドアを開けてコンビニで買ったホットコーヒーを差し出してくれた。
「おはようございます。よく眠れましたか?」彼は少し恥ずかしそうに尋ねてきた。
「ええ、コートをありがとう」
私はコーヒーを受け取り、彼のTシャツを指差した。
「寒...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
縮小
拡大
