第9章

銀座のオフィスビルのエレベーターホールで、私は深く息を吸い込んだ。

今日は離婚にまつわる株式や会計上の問題を処理する日だ。財産分与に関わる金額は、決して小さくない。

エレベーターの扉がゆっくりと開き、一歩踏み出したところで、総務部長の小林が珍しく慌てた様子で小走りにやってくるのが見えた。

「岩崎常務、ご報告したいことがございます」

彼はわずかに腰をかがめ、声を潜めた。

「たった今、社長から白石瑞希を解雇するとの通達が下りました。彼女はもう荷物をまとめております」

私は呆然とした。誠君が、本当に白石を解雇した?あまりに突然の決定で、自分の耳を疑うほどだった。

「そうです...

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