第172章

午前三時。碧井天川はようやく帰宅した。

 リビングは闇に沈んでおり、明かりはついていない。彼が通り過ぎようとしたその時、碧井奏の声が幽霊のように漂ってきた。

「叔父さん、やっと帰ってきたんだ」

 不意の声に、天川は心臓が跳ねるのを覚えた。

 眉を寄せ、闇の中のソファに座る奏に視線を向ける。

「夜更けに寝ないで何をしている」

 パチッ、という音と共に、奏が明かりを点けた。

 彼は複雑な眼差しで、叔父の目を真っ直ぐに見据える。

「叔父さん、こんな時間まで誰と会ってたの?」

 いつものような叔父への畏怖はない。藍原華月の悲痛な瞳を思い出し、奏は拳を固く握りしめた。

 幼い頃から...

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