第173章

妻との口論を避けるため、碧井黎人はやれやれと無力感に満ちた溜息をついた。

「今は天川が説明したくないわけじゃない。華月がドアを開けてくれないんじゃ、説明しようにも手も足も出ないだろう」

 碧井天川にとっても初めての事態であり、彼は完全に困惑していた。

 柊木汐里はそんな兄弟を一瞥すると、扉の前へと歩み寄り、軽くノックをした。

「華月ちゃん、まずはドアを開けてちょうだい。誤解があるなら天川さんに説明させなきゃ。夫婦喧嘩は犬も食わないって言うでしょう? 冷戦なんてよくないわ」

 碧井奏も、藍原華月が早まった真似をするのではないかと気が気でない様子ですぐさま言葉を継ぐ。

「そうだよ。今...

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