第23章

しばらく藍原華月からの返答がない。電話の向こうから、藍原の母の焦ったような声が再び響いた。

「華月? どうして黙っているの? 何かあったの?」

 藍原華月はスマホを握る指先に力を込め、鼻声で答えた。

「お母さん、聞いてるわよ。ありがとう」

「水くさいわね。親子でしょう、お礼なんていいのよ」

 娘の声を聞いて、母はようやく安堵の息を漏らした。

「くしゅんっ――」

 冷たい夜風が吹き抜け、華月はたまらずくしゃみをした。

「風邪、ひどくなってるじゃない。もっと厚着をして、温かいお湯を飲みなさい」

 母の心配そうな声が受話器から流れてくる。

「昔はあなたが風邪を引くと、お母さんが...

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