第253章

桐原永子は淡々と視線を外し、何も答えなかった。

 藍原華月には、その沈黙が肯定のように思えた。

 華月は胸を痛めながら義母を見つめた。かつて、義母と義父は深く愛し合っていたに違いない。

 だが会社の事情により、二十年以上も引き離されてしまったのだ。

 愛し合う二人が離れ離れになり、夫もまた、幼くして母を失った二十余年。そう思うと、華月の胸はさらに締め付けられるようだった。

「お義母さん。今回、本邸に来る決心をしたのは、やっぱりお義父さんのためですよね?」

 図星を突かれ、桐原永子は慌てた様子で言い訳をした。

「華月さん、違うのよ。あの人には奥様がいるわ。私にやましい気持ちなんて...

ログインして続きを読む