第259章

彼女の落胆を見て取り、碧井天川は何か言おうと口を開きかけたが、言葉は喉元で止まってしまった。

 まさか三十歳になるまで童貞だったなどと、この幼い妻に言えるはずもない。

 翌朝、藍原華月は早くから起きていた。

 碧井天川が目を覚ました時、彼女は甲斐甲斐しく荷造りをしている最中だった。

「随分早いな」

「あなたの荷物をまとめていたの。これからの出張準備は私がやるわ。着替えも入れたし、ネクタイも選んでおいたから」

 藍原華月はネクタイを専用のスペースに収め、再度入念にチェックした。

「そんなことは使用人に任せればいい」

 碧井天川は口元を緩め、愛おしげに彼女を見つめた。

「駄目よ...

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