第54章

しかし、彼女の言葉が碧井天川の決意を揺るがすことはなかった。彼の声は平坦で、何の波風も立たない。

「義姉さんが俺に碧井奏の教育を任せると決めたなら、口出しは無用だ。これしきのことで心を痛めるくらいなら、義姉さんが自分で大事な息子を教育すればいい」

 柊木汐里はそれを聞いて、慌てて弁解した。

「天川、そういうつもりじゃないのよ。あなたの言う通りだわ。碧井奏のやつ、小さい頃から甘やかされすぎて育ったから、少しは苦労させないとね」

 昨晩、ようやく碧井天川を説得して碧井奏の教育を頼んだのだ。こんな些細なことで彼の機嫌を損ねるわけにはいかない。

 柊木汐里は元気のない藍原華月に目をやり、自...

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