第56章

「口答えを覚えたか」

 碧井天川の声は冷たく沈み、そこには微かだが隠しきれない怒りの色が滲んでいた。

「叔父さんに口答えなんて滅相もないけどさ。でも、開口一番に説教ってのは勘弁してよ。俺にだってメンツってものがあるんだから」

 ただでさえ不機嫌だった碧井天川は、碧井奏の反論を聞いてさらに声の温度を下げた。

「どうやら、余った体力の使い道に困っているようだな。いいだろう、ここから走って帰れ。身体を鍛えるにはちょうどいい」

 その言葉に、車内は瞬時に静まり返った。

 碧井奏は呆気にとられた表情を浮かべる。

「叔父さん、ここから家まで二十キロはあるんだよ? 本気で走れっていうの?」

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