第60章

藍原華月はずっと黙り込んでいた。先ほどから、碧井天川の視線が自分と碧井奏の間を行ったり来たりしているような気がしてならなかったからだ。

 もしここで碧井奏を庇うようなことを言えば、また彼の機嫌を損ねることになるのは目に見えている。

 隣で沈黙を守る華月を横目で捉え、碧井天川は低く沈んだ声で言った。

「碧井奏と同じ車じゃなくて、失望したか?」

 藍原華月はきょとんとして、無意識に口を開く。

「えっ? そんなことないわよ」

「そんなことない、とはどういう意味だ。やはり失望したのか?」

 碧井天川の瞳の色が暗く沈み、その言葉には抑えきれない怒りの炎が揺らめいている。

「違うわよ! ...

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