第69章

 碧井天川が自ら藍原華月に料理を取り分けるのを見て、その場の全員が目を丸くした。

 まさか彼が、人に料理を取り分けるなんて!

「もっと食べな。今日はどうして一人で帰ったんだ? 俺を待たずに」

 彼は華月の小皿に料理をよそいながら、優しい口調で問いかける。

 その言葉に、華月の脳裏にはオフィスでの口づけが鮮明に蘇った。顔がカッと熱くなる。

 恥ずかしくて逃げ出したなんて、言えるわけがない。

 違う違う違う!

 そんなことを認めたら、自分がどれだけウブか白状するようなものだ。

 たかがキスじゃない。初めてでもないのに、何をそんなに照れているのよ!

「急に用事を思い出したから、先...

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