第74章

 藍原華月は黙り込んだ。碧井天川に対して、自分がどう思っているのか分からなくなっていたからだ。

 最初は冷酷で気まぐれな男だと思っていた。あの頃は、いつ離婚できるかということばかり考えていたのに。

 けれど、いつからだろうか。彼への想いが少しずつ変化し始めたのは。

 たぶん、好きなんだと思う……。

 だが碧井天川は最初から、華月のことを手段を選ばず嫁いできた女だと決めつけている。彼が私を好きになることなど、絶対にあるはずがない。

 もし本当に彼を愛してしまえば、最後には傷つくことになるのではないか。華月はそれが怖かった。

 華月の頬が微かに染まるのを見て、風祭鈴奈は概ね察したよう...

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