第80章

車内は、息が詰まるような重苦しい空気に包まれていた。

 藍原華月はうつむいたまま、一言も発することができない。

 碧井天川は彼女の手を握りしめ、優しい声色で問いかけた。

「今夜の菓子に使った材料に、間違いはないか?」

 先ほど医師が告げたところによると、菓子そのものではなく、何か別の毒素を誤飲した可能性が高いとのことだった。

 その言葉に、華月は怯えた瞳を彼に向けた。動揺が隠せない。

「お爺様を、私が毒殺しようとしたとでも言うの? わざとじゃないわ、小麦粉も材料も、全部スーパーで買ってきたもので……」

 語尾が消え入りそうになる。もし天川に疑われているのなら、どんなに弁明しよう...

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