第87章

「私……」

 碧井天川に見抜かれ、藍原華月は気まずそうに口ごもった。

「ただなんとなく聞いただけで、や、焼き餅なんかじゃないわよ」

 頑なに認めようとしない彼女を見て、碧井天川もそれ以上からかうのはやめた。

「はいはい、そういうことにしておこうか」

 彼女のささやかなプライドを守るため、碧井天川は彼女を抱き寄せ、その唇を塞いだ。

 最初は優しかった口づけが、次第に熱を帯びていく。藍原華月は息も絶え絶えになり、彼の胸を両手で押し返そうとした。

「息継ぎだ。いつになったらキスの仕方を覚えるんだ?」

 顔を真っ赤にしている彼女を見て、碧井天川は愛おしさと可笑しさがこみ上げてきた。

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