第6章
月曜の朝、青空放送のメイク室。これから始まる番組のため、鏡の前に座る私にアシスタントの梨乃がヘアメイクを施していた。
「絵里さん、今日、顔色が優れませんね。コンシーラー、もう少し厚めに塗りましょうか?」鏡越しに、梨乃が心配そうな顔で私を見つめる。
別居してから三日、隆からの電話は一度もなかった。彼はもう、私たちの結婚生活を本気で諦めてしまったのだろう。
それなら、こちらもすっぱりと終わらせよう。
私はスマホを手に取り、弁護士にメッセージを送った。『離婚届の準備を急いでください。今日の午後、隆のオフィスに送付をお願いします』
送信ボタンを押した瞬間、心が無慈悲に引き裂かれる...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
